[設定チームの積もる話] 第7話 – オルビス大陸の歴史

皆さん〜久しぶり!先生も皆と会いたかったよ〜
どうして訓練ばっかりやらせて、理論の授業はやらせてくれないのかしら?
今日は厳しい訓練で疲れた皆のために「オルビス大陸の歴史」についての特別授業をしてあげようと思うの!
なぜなら世の中で一番面白い科目と言えば歴史に決まっているからよ!
近頃、魔法や剣術だけできれば良いって人も増えているけど…
歴史を知らなくして良き勇者になれるものか!勇者を目指すもの、歴史を知るべきよ~!
魔族の軍勢も拡大しているし、ベスピア帝国の情勢も尋常じゃない今はなおさらのこと!勉強を怠ってはダメなのよ。

今日の授業はテストに出さないから、昔話でも聴くように気楽にどうぞ!
でも、頑張って準備してきたからね、一生懸命聞いてくれると先生嬉しいわ!

オルビス大陸は、皆も知っている通りオルべルリア王国の他、ペンテオニア、ベスピア帝国などの周辺諸国で構成されているわ。
そして、魔族に占領されて誰も近づけなくなったクムスラントという場所もあるわよ。
あそこは草すらも生えないところで有名だけれど、我がオルべルリアだけでなく、ペンテオニアでもその場所へむやみに入るのは固く禁止されているし、規律を破って入った人は誰も帰って 来なかったから間違っても入らないように!

始めから怖すぎる話をしてしまったかしら?
ふふっ、でも、おかげで眠気が覚めたでしょう?では次に、我がオルべルリアの同盟国であるペンテオニアの話をしてみましょう?
両国が政治的にも、そして地形的にも非常に密接な関わりを持つということは皆も知っているはずよ。
しかし、なぜ両国が同盟国になったのか、どうしてこんなにも仲が良いのか知っている人はないのかしら?

おおっ、そこの手をあげた人!答えを知っているのかしら?
…へえ~ベスピア帝国が建国されて、牽制するために力を合わせただって?
もちろん帝国がオルべルリアやペンテオニアと親しくないのは事実だけど。
ベスピア帝国が登場する前から両国は非常に仲が良かったわよ。

その理由は…ただあぁ!もともと「一つの国」だったからです〜!
もともとペンテオニアとオルべルリアは一つの国だったの。
見分けやすいように「旧ペンテオニア」と呼びましょうね?
光の魔法と女神ルアを崇拝する国で、教皇と国王が一緒に国を治めたと伝えられているわ。国教はもちろんルア教だったわよ。
今のペンテオニアとほとんど変わらないでしょう?
本来は魔導王国とは比較すらできない、とても小さくて特徴のない国の一つだったけれど。ルア教が成立して以来、政治はもちろん、社会的にも急激に発展を遂げて安定的に成長していったわ。
多くの国が滅び、生まれるのを繰り返す激動の最中、運よく生き延びたとでも言えるわね。
アイギーナ砂漠の伝説に登場する古代セキレイネルの滅亡よりも後で建国されたのだから、けっこう新しい国という考えも正しいわ〜

しかし、「旧ペンテオニア」は成長過程において歴史的な局面を迎えることになるの…そう。
ペンテオニアとオルべルリアが分離されたことよ!
さっき説明したように「旧ペンテオニア」はルアを崇拝していたわ。
そして、ルア教は昔から魔族との戦いを続けてきたの。

100年前、 カイル王との最後の戦いで魔族の数は急激に減少し、近ごろは魔族をおとぎ話の中の化物ぐらいに思っている人も少なくないわ。
しかし、ルア教の歴史記録やペンテオニアの古書、そしてオルべルリアの歴史書でも魔族と天族の記録が多く残されているの。
そんな流れで、50年ぐらい前には、魔族が本当に存在するとしてもモンスターの1種に過ぎないという主張を広げる学者さんもいたらしいんだけれど…
その話は次の授業で詳しく説明してあげるわ!

フム…どこまで話をしたっけ?
ああ…そう!魔族とルア教が戦っていたところまでだったわよね。
旧ペンテオニアにも光の結界が存在して、そのおかげで魔族の侵攻を免れたという記録が残されているわ。
しかし、光の結界はあくまでも防御するための手段!全国民が光の魔法を使えるとしても、魔法師や聖騎士ほどの力を持たない限り魔族と対等に戦うのは無理な話だったわ。
そんな彼らに女神ルアは光の武具を授けたわよ!
それがまさに「聖剣」!皆も100年前にカイル王が聖剣エアに選ばれて戦ったのは知っているでしょう?
オルべルリア建国初期に登場した聖剣が、カイル王が使用した聖剣エアなのかは、まだまだ学者たちの間でも熱く議論されているわ。
でも、光の結界と同様、女神ルアが人間に授けた物ということと、オルべルリアの歴史に登場する聖剣が一つだけだといういくつかの証拠によって、今はオルべルリアの建国に大きな役割を果たした聖剣がまさにカイル王の聖剣だという説が有力になっているわ。

建国初期の歴史に登場する聖剣と、聖剣エアの類似している部分がもう一つあるんだけれど、撰ばれし者だけが扱えるということよ。
説明しやすくするために、最初に聖剣に選ばれた戦士を初代戦士と呼ぶわね~
初代戦士はペンテオニアを守護する光の結界の向こう側の、まだ「国」という概念さえ知らない人々を救おうとしていたわ。
当時これは、とても不穏な発想だったわよ!女神の国で女神から授かった物を持ち去るということ自体が反逆とみなされるかも知れなかったのだから。

初代戦士は悩みの末、自分の意志をルア教に示したわ。
騒ぎにはなったものの、ルア教は彼の地位を考慮して女神の啓示を受けて決定することにしたの。
その結果…驚くべき啓示が下されたわ!
女神は初代戦士の意志のまま聖剣を持ち出し、さらに魔族を討伐して世界を救済することを命じたのよ!
オルべルリアが魔族との果てしない戦いをすることになったのは、この時からだったのかもしれないわ。
女神が直々に魔族に対抗する力だけでなく、魔族を討伐しろという宿命を授けたのだからね。

啓示を授けた初代戦士は、自分を従う者たちと共にペンテオニアから離れたわ。
そして、現在の首都オルベルを中心にオルべルリアを建国し、セキレイネルの末裔や森のエルフを含む多くの種族を取り込んで王国としての成長を遂げたわ。
初代戦士は王となった直後にこう演説したらしいの。
「女神から授かったこの力は魔族を滅ぼすためだけの力であり、ルアの名においてすべての者を守るために戦うことを誓う」とね。
ほほぉ、考えてみればカイル王もエルフやフロストジャイアント、そしてドラゴンまで様々な種族を仲間にして戦ったじゃない?
例外ではあるけれど魔族もいたし〜 その影響でオルべルリアは人間以外の種族を差別せず、異種族を尊重する文化がよく形成されていると思うわ。

初代戦士が亡くなってから、聖剣は歴史の中で長い間姿を消したわ。
だけど、女神の啓示によると、魔族が再び世界を脅かす時に姿を現わすと伝えられていたわ。
うん?オルべルリアが再びペンテオニアに吸収されたり属国にされてないことも、その啓示のおかげじゃないかって?
あら、あなた本当に賢いわね!
そう、聖剣に選ばれた国という正統性を持つようになったのよ。
ペンテオニアはルア教の影響力がすごいじゃない?女神からの啓示がある限りオルべルリアを認めざるを得なかったのよ。
幸いなことに両国には魔族という共通の敵もいたから、お互いを助けあう名分も十分だったわ。
そして皆も知っている通り、聖剣は100年前に再び姿を現せ、魔族を討伐してオルべルリアを団結させる力になってくれたわ。

あら?何か質問があるかしら?
…なるほど、オルべルリアが分離された後、ペンテオニアには大きな変化がなかったかって?
まあ…国教であるルア教を信じ、光の魔法を崇拝する雰囲気はあまり変わらなかったわ。
地理的にも光の結界から離れる理由が全くなかったしね。
しかし、初代戦士が去った後、ルア教の政治的影響力が異常なまでに強くなったと伝えられているわ。
光の結界の守護の力はペンテオニアに授けられた女神の恵みであり、女神を真に信じて従う者に聖剣のような力が授けられるという主張が力を得たのよ。
旧ペンテオニアは王と教皇が別々に存在していたと話したわね?ルア教の力が大きくなるにつれ王権は力を失っていったわ。
その結果、ペンテオニアに属する大司祭ではなく、ルア教直属の大司祭がオルべルリアに派遣されることもあったわ。

うん?アイリス大司祭様がペンテオニアの人か気になりますって?
こら、今の話はオルべルリア王国の建国初期の歴史だって言っているでしょう〜
その時から生きてらっしゃるとしたら…少なくとも600歳以上のはずよ?
ペンテオニアがオルべルリアに大司祭を派遣することになってから、オルべルリアでもルア教を信じる人々が集まって教理を教え、聖騎士と共に司祭を養成し始めたわ。
それこそ女神ルアの名の下に集いし兄弟ってことなのよ!
オルべルリアでも強い神聖力を生まれ持つ人が稀に出てくるでしょう?彼らの先祖がペンテオニア人だからという仮説が広まった理由でもあるわ。
もっと詳しい内容が気になる人には歴史書を貸してあげますから、放課後、先生のところに来るように!

あら?もうこんな時間。
毎回のことだけど時間配分は難しいわね〜
10分だけ授業を延長しましょうって言ったら、みんな嫌がるわよね?
はぁ、わかったわ。
じゃあ短くベスピア帝国とグレイ公国の話だけして終わりにするわよ!

起源が比較的に明確なオルべルリアとペンテオニアとは違って、ベスピア帝国はあまり記された歴史がないわ。
ルア教を信じる人も…国民の1割を超えないはずよ?
なのに凄まじい軍事力だけで他国を侵略し、武力を持って統合し続けて帝国領を作り上げたの。
深い歴史と文化を持つオルべルリアとペンテオニアも王政を維持しているというのに、まったく傲慢というか、すごいというか。
彼らの軍事力は厳しい軍事教育と最先端の魔導工学技術で維持されているわ。
だからか古代の魔導王国を継承したと言っているけれど…正直なところ魔導工学技術はどこかの遺跡でも盗掘したかもしれないし、何よりも事実を裏付ける証拠が何もなくって歴史学者たちからは認められてない状態よ。

それでは最後にグレイ公国の話をするわ。
かつてはグレイ家が率いる小規模な流民集団に近かったけれど、ものすごい魔導工学技術を保有していて、誰も手出しができないほどの力を持っていたそうよ。
ベスピア帝国よりもグレイ家の方が魔導王国に近いという噂もあるくらいね。
グレイ公国がガルア平原に位置していたと記録はされているけれど、公国を建国する前のグレイ家は浮遊島の上に住んでいたという説もあるのよ。
そう、まるで賢者の塔のように!すごいと思わない?

大小を問わず全ての国を飲み込んだベスピア帝国ですら、グレイ家には手出しできなかったわ。
もう、動く巨大要塞のようなものまで所有していたと噂されているから〜 現実感がなさ過ぎて手出しする気がなくなったのではないかしら?グレイ家がその気になれば帝国はもちろん、オルビス大陸を支配することも可能だったはずだけれど、彼らは欲がなさ過ぎたみたい。
すでに必要なものをすべて持っていたからかしら?グレイ家が他国を侵略したり、武力で領地を広げたという記録は残されていないわ。
他国から政略結婚の申し出があったという記録は残されているけどね。ほほほ。

そんな強大な国が、なぜオルべルリアと友好関係を結んだのかですって?非常に良い質問ですわね!
グレイ家でもいろんな悩みがあったと思うわ。
グレイ家がいつまで維持されるだろうか。魔導工学技術が悪用されたり消失されないように守れるのかなどの悩みがね。
彼らが他国を侵略したり攻撃せずに過ごしてきた一番の理由が、グレイ家の維持と保安に徹底していたからという説もあるくらいよ。
それでも、いつまで引きこもって生きていくわけにはいかなかったらしいわ。

そこで友好関係を築けそうな国を探そうとしたら…ペンテオニアはルア教の影響が強すぎて、魔導工学を受け入れるのに拒否感があったらしいわよ。
記録によると、グレイ家でもペンテオニアと関りを持つことに否定的だったらしいし、なぜかペンテオニアの国教であるルア教との間が悪かったみたい。
一方、ベスピア帝国は攻撃的に魔導工学技術を狙っていたんだけれど、静かで平和に生きてきたグレイ家が、他国を侵略しながら規模を拡大してきた帝国を快く思えたかしら?もちろん嫌がっていたわ!
そこで、オルべルリアは人間以外の種族もすべて受け入れる国だったし、魔族との戦いに備えて力を蓄える必要があったの。
そして彼らはグレイ家が所有する魔導工学技術を奪う気は全くなく、友好関係を結びたいと長い間、同盟を申し出たらしいわよ。

古代セキレイネルの一族が、自分たちの歴史や文化を維持したままオルべルリアに溶け込んだことは話したわよね?そんな統合ができる国はオルべルリアだけだったの。
それを高く評価したグレイ家は公爵という地位と領地、そして独自の一族体制を維持することを条件にオルべルリアと同盟を結んだのよ。
彼らが今も生き残っていたら良いのに…あいにく100年前の魔族戦争の時、内部からの裏切りと強力な魔族の侵攻によって滅亡されてしまったわ。
これについては、また今度詳しく説明してあげるわね!

では、今日の授業はここまで!ぴったり時間通り終わったわよ。
みんな目もキラキラしていて先生嬉しいわ!
この機会にオルべルリアだけでなく、歴史について興味を持つ人が増えるといいわね〜
それでは、残りの授業も楽しく聴くように!

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